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私は旅行にいく時、特に、飛行機に乗ったり、船に乗る時には
、自分の顎態模型と口腔内のレントゲン写真を家族に預けて行
く事にしている。
どうしてかと言うと、それは『もしも』の時のためだ。
以前、技工学校時代に受けた法歯学の講義で、身元不明遺体が
発見された時には、その身元を捜す手がかりとして歯形や歯科
医院での治療履歴が重要な役割を果たすと聞いた。
私はこの講義に大変興味を持った。
それは、1985年に起きた御巣鷹山の日航機墜落事故が私の住
む地域の近くであった事、そしてその事故の被害の大きさ、悲
惨さを生々しく聞く環境にいたからだ。
その当時、私の住む地域の空には自衛隊のヘリコプターが騒然
と行き来し、まだ小学生だった私の目にも、重大な事態が起き
たと理解できる、とても恐ろしい光景だった。テレビのニュー
スでも連日報道され、犠牲になった人の身元確認が難航してい
ることなども伝えられていた。
そして後に歯科技工士となり、勤務した技工所と取引がある歯
科医院の先生がその当時、事故現場で検死医として遺体の身元
照合に携わった事を知り、またその先生の手記などで、当時の
悲惨さをかなり現実的に改て知った。
飛行機や船を利用する際には、必ず数%の危険が伴う可能性が
あるとおもう。
事故にはあいたくはないが、万が一あってしまった時、そして
その事故の被害が大きければ大きいほど、命の保証は無いし、
外形だけでは身元確認すら不可能な事態に陥る。 事故にあっ
てしまうのは仕方がない。 きっとそういう運命だったのだと
納得せざるをえない。 しかし、せめて肉体だけでも家族の元
へ帰りたい。
だから私は、いつ何があってもいいように、身元照合に必要な
アイテムを事前に家族に預けていく。 家族は「そんな縁起で
もない」と嫌な顔をする。 あま、それも解らないでもない。
私だって事故に会いたい訳じゃない、ただ、万が一を考えての
事なのだ。
逆に考えると、この行動が、私にとってある種の事故に会わな
いための願掛け、保険となっているのかもしれない。
『この模型とレントゲン写真を使う時が来ませんように…』と。
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