この友人Sは高校時代からのつきあい。 同じバスケ部で一つのボールを追いかけ、
一緒に汗を流した仲間です。今は東京で理容師として活躍しています。
以下綴る文章は友人Sが語った全てです。もちろんノンフィクション。
S この前、親知らずがどうも痛くてさ〜、歯医者に行こうと思ったのね。
YO-YO ほう、抜いたの??
S それがさぁ・・・・
YO-YO どした?
S
近所に一軒歯医者あったな〜って思って行ってみたのね。 したら、そこの先生が、かなりのおじいちゃん
先生でね。穏やかな声で『ちょっと前に足をケガしましてね・・・。 そのせいで機械が動かせなくてねぇ〜。
しばらく治療できないんだよ、2,3日したら治ると思うから、またその頃きてくれないかねぇ〜?』
って言うんだよっ
なんと呑気なおじいちゃん先生だろう。 足のケガでフットスイッチか何かが操作できずに、
わざわざきた患者を帰してしまう・・・
S 『2.3日たったらまた来て』って言われてもさ〜私だってそんなに暇じゃないからさぁ
YO-YO そだよね
S だからさ〜 たしか近くにもう一軒歯医者あったよなぁと思ってそこに行くことにしたのね
YO-YO おお
S 歯が痛いとさ〜やっぱりそのことしか考えられなくなるのよね。 やっぱ歯が痛いのだけは我慢できないじゃん
YO-YO そだよ、早いうちに治療しといた方がいいよ
S 歩きながらキョロキョロ探してて、そうだな、10分くらい歩いたかな。 やっと見つけたのね
YO-YO おぉ〜 結構近くにあったんだねぇ
S そ。 入り口のドア開けたらちゃんと受付に白衣着た女の子もいるし。あ〜やっと治療受けれるぅって感じね
YO-YO その歯医者で親知らず抜いたの?
S それが・・・・・
Sが少し言葉をつまらせた。 ここの歯科医院でも治療が受けられなかったとでもいうのか??
S 受付に保険証を出しながら、『初診なんですけど・・・』って言ったのね
YO-YO うんうん
S そしたら受付の女の子に、『Sさん、今日はどうなさいました??』って聞かれたのね
だから、『親知らずが痛くて・・・』って言ったの。 そしたら『えっ??』って聞き返されて・・・
YO-YO ほう
S もう一回『おやしらずがいたくて・・・・』ってハッキリ言ったの。 ハッキリ。
それでも女の子は解んないみたいで、不思議そうな顔してるんだよ
YO-YO 8番とか言った方がよかったんじゃないの?
S したらさー、女の子が小声で言ったんだよ。『あの〜ここ眼科ですけど』って
YO-YO ちょっと待て!!Sあんた話作ってるでしょ!?
S そんなわけないよ!!ホントなんだよ!!
Sが言うには・・・・
必死の思いで歯科医院を探したと思ったら、それはなんと眼科医院だったということらしい。
Sはあまりの恥ずかしさに受付に出した保険証を女の子から奪い取り、逃げるようにその眼科医院を
後にしたという。
YO-YO だからさーネタでしょ!?作ってるでしょ??
S 違うよ〜!!ほんとに間違えちゃったんだよ!!
YO-YOの疑惑追求に必死に抵抗するS。そういえばSはむかしから猫背だった。
高校の制服を着ながら歩いているときも、バスケの試合でシュートを決めたときも、いつもいつも猫背だった。
そのSが今、電話を片手に自分の身に起きた事件を一生懸命YO-YOに伝えようとしている。 きっと
今この瞬間も猫背であろう。YO-YOにはその姿が目に浮かんだ。
S ホントもう恥ずかしくてさ〜 外に出て看板見たら、ちゃんと「〜眼科」って書いてあるんだよ。
落ち着いて見てみると、眼科にしか見えないんだよね〜。私の人生の中でBest3に入る恥ずかしさだったよ、
あれは
Sはその後にもう一軒歯科医院を探し当て、無事に親知らずを治療できたという。
ここまで治療するまでに手こずったのは、親知らずが何らかのメッセージをSに送っていたのではない
だろうか?いや、きっとそうであろう。
YO-YOはこんなSの身を心底心配した。 今現在、東京の荒波にもまれながら生活していることが不
思議でもあった。だがSは、今も東京で理容師としてがんばっている。これ以上の恥ずかしい事件を起
こさないように願う。もし、東京で猫背の理容師を見つけたら皆さんも温かい目で見守ってやって欲しい。
しかし、歯の痛みというのは決してあなどってはいけないものである。 今回の事件からもわかるように、
歯痛と言うのは人間の判断能力と視力をおそろしくも低下させてしまうものなのだ。
あ〜怖ろしい。
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